幸せな記憶

10月。
『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』
完全吹替版 制作発表会見のニュースがワイドショーで流れていた。

「僕の魔法のチョコレート、食べてみる?」

この一言を聞いて、映画館へ行くことを決めた。

若き日のウォンカどころか、
ウィリー・ウォンカという人物を私は知らなかった。
ウィリー・ウォンカとは
チャーリーとチョコレート工場』に登場する
チョコレート工場の工場長なのだそうだ。

それさえも知らない。
だけどあの一言で、あの一瞬で私は彼を、
「ウォンカだ…!」と思った。

素敵な音楽に出会えた瞬間みたいだった。
声に導かれて、心が動く。

つぎはぎだらけのウォンカのブーツの足音が、
やけに胸に響いた。
ひとすじの光で救ってほしいと願ったし、
あのたくさんのカラフルな風船で
私も一緒に夜空を飛びたいと思った。

何か1つだけ、たった1つだけでいいから
夢があったら。
夢を見ることができたら。
ウォンカみたいに強くて真っ直ぐ、
優しくなれるだろうか。
誰かを助けたり、
たくさんの人を笑顔にしてあげたり。
私にも、できるだろうか。

美しい音楽と美しい景色が広がっている。
みんなで一緒に。
みんなで1つのものを一緒に。
それが、どんなに幸せなことか。

夢を叶え、これから時が経っても
ずっと笑っていてね。と願わずにはいられなかった。

これからもウォンカのチョコレートで
世界中の人たちが幸せになりますように。